ぼんやり日記

毎日の記録

誕生日

◎2020年7月18日(土)

 28歳になった。今日こそ「はちどり」を観ようと、有給を取ってナナゲイへ。30分前に席を押さえればいいかーと思っていたら、14時10分の回が売り切れ。感染防止対策で席数がかなり減っているから、どの映画もすぐに埋まってしまうみたい。仕方なく、19時半の回のチケットを買う。

 近くで暇をつぶす場所もなく、とりあえず商店街をあてもなく歩く。いくつかの商店街が接続しているので、意外と距離がある。フレンドリー商店街、十三町商店街とか。とにかくどこかしらの筋に入れば商店街がある。十三って、商店街好きにとってはなかなかアツいスポットでは。いかにも大阪な看板が目を引く。

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 「ねぼけ堂」という和菓子屋さんのネーミングが、いつも通る度に可愛すぎてずるいな~と思う。私が店を開くならこんな名前を付けたい。

 

 阪急で梅田に行けば時間をつぶせる場所はいくらでもあるのだが、休日の人混みを思うと気が進まない。思いつきで、十三と梅田の間にある中津へ。すぐそばにグランフロントが見えるし、駅近の高級マンションには「梅田」って冠が付くし、梅田の一部と化しているように見える。でも、駅のホームは超狭くて、「黄色い線の内側にお下がりください」の内側のスペースがほとんどない。外観も構内も暗く、じめっとした空気。駅を降りるのは私しかいなくて、電車に乗る人は皆梅田を目指す。駅を出ても、周辺に住む人が犬の散歩をしているくらい。相変わらず、都会にぽっかり空いた不思議な空間だなーと思う。中津商店街から駅の方を振り返ると、梅田のビルとの対比が象徴的。

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 アーケードのテントが剥がれているから見える景色だけど、前からこんなんだったっけと調べたら、2年前の台風でぼろぼろになって撤去したらしい。

 

 行きたかったカフェは満席で、まちライブラリーもやっていなかった。公園のベンチで西東三鬼の「神戸・続神戸」を読んだ。久しぶりのいい天気だからか、親子連れが砂場や遊具で遊んでいた。私の向かいのベンチでは、60、70代くらいの男性がスポーツ新聞を抱え、仰向けになって昼寝していた。男の人、特に中年の人は、いたるところのベンチで躊躇なく寝転んでいる姿を見る。ホームレスの人や酒に酔っているというシチュエーションでなくても。女の人は見たことない。私もスカートじゃなくてズボンを履いていたら寝転んだだろうかと考えるけど、人目が気になってしまう。

 

 スカイビルまで歩いた。線路沿いは、ウメキタの開発地区で、工事のトラックしか出入りしていない。また数年後歩いたら、景色がかなり変わっているはず。

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 スカイビルでも、外のベンチで本を読んだ。木陰があって、涼しい。パーティーのような、ウエディングのような、派手な装いの集団がわいわいと撮影をしたり、ワンピース姿の清楚系の女性を撮影するカメラマンがいたり。カメラマンが「うーん、いいねいいね。ああセクシー」「目線ちょうだーい。もう!最高!」とか、演技じみた声かけをするので笑ってしまう。中津のウエストパンで買ったパンを食べていると、スマホにヤフーニュースから「俳優の三浦春馬が死亡」という通知が表示された。順風満帆で輝いているように見えていたから、何で?って気持ちしかなかった。私のそばを通り過ぎる人たちも皆、その話題を話していた。7月18日、昨年は京アニの事件が起きたし、今年は三浦春馬さんが亡くなるしで、不吉な日と印象付けられそう。

 

 ビルにあるシネリーブルを覗く。気になっていた「パブリック 図書館の奇跡」が、ちょうど5分後に上映するようなので、見ることにする。ここも座席は半数くらい。

 冒頭からゴリゴリのヒップホップで、お!これは当たりでは…とわくわく。主演のエミリオ・エステべスは知らなかったんだけど、この作品の脚本と監督も務めているという。すげえ。退役軍人が多いとみるに、日本とはホームレス事情がまた違うのかな。公共のために頑張ってきた人が公共から見捨てられそうになるのは皮肉。皆、図書館を昼間のシェルターとして使い、歯磨きしたり、ひげを剃ったり。会話の端々に、本を読んで蓄えた知識を披露してくるのがおちゃめ。

 主人公は今現在、司書という手堅い職に就いて、ずっと生真面目に真っすぐ生きてきたように見える。でも、路上生活を経験し、元アルコール依存症。前科もある。ここで起こる騒動の首謀者ではない彼が、当人たちよりものめり込んでいく姿がアツい。立ち直ることができるのも、それを維持できるのも紙一重。今困っている人だけが当事者ではない。自己責任という言葉が蔓延する今に刺さる話だった。

 

 観終わって即、ナナゲイに移動し「はちどり」を鑑賞。夜も満席。昼に席を買ってよかった。

 家父長制と家庭内暴力、思春期の微妙な人間関係、憧れの人との別れ。出来事を羅列すると、本当に辛いことばかり起きる。でも、単に悲痛な物語という風には見えないのが不思議。主人公のウニが隙を縫って、好きな人といちゃついたり、背伸びしてクラブに行ったり、青空の下できゃっきゃ言いながらトランポリンで跳ねたり。中学生らしく楽しんでいる場面も印象的で、これから成長して大人になっていく姿を想像できるから安心できるのかな。何より、漢文教室(そんなのあるんだ!)のヨンジ先生との出会いが大きい。

 上映後の山中瑤子監督のリモートトークショーで「ウニが子どもとして扱われていた。先生は先生で精神的に不安定なところもあるだろうけど、ウニといるときはちゃんと大人でいてくれた」と話していたのが、そうそう!って納得。そこがヨンジ先生の好きなところ。子どもの頃に、信頼できる大人に出会えるかって今後の人生を左右するよね。女性は特に「女の子はませているから」「小さくても女は女ね」とか、やたら実年齢に見合わない見方をされることもあるけど、子どもとして過ごす時間を尊重してほしいね。