干支の話
◎2022年5月10日(火)
「あんた干支は?」
「午年やけど」
「ほなら3つ下?もっと若く見えるわ」
「干支なんか普段覚えてるか?」
「何言うてんの」
「私はな、????(何かの病気。聞き取れなかった)やからな」
「そないゆうたら私かて????やし」
「それに98歳の婆さんの介護してまんねん」
「いやぁ、ご苦労様や」
…
銭湯の脱衣所で話し始めたお婆さま方。ご近所さんのようだが、初対面らしい。
熱い湯に浸かりすぎて、頭痛で気持ち悪くなりながらも、すぐ隣で聞こえる会話を聞いていると、なんだかすーっと心が落ち着いた。
私が同世代の初対面の人と話す話題といえば、仕事、趣味、家族構成など。
たとえ自分が話したくなくても、どうしてもその話題になる。自分そのもの(とは何かはさておき)というより、自分の属性について語ることに最近疲れていた。それに、自分の将来について考えては落ち込んでいた。
でも、なんだ。歳を取れば、干支の話題でひと盛り上がりできるんじゃないか。羨ましく思った。自分もいずれはこうなれるのだろうか。
健康問題に触れることは若い頃はタブーな気がするけど、歳を取れば誰しも身体に不調を抱えて当たり前。もちろん年齢関係なく、話したくない人は話さなくていい。
でも、お婆さんたちは、天気の話をするように、自分の病気について語る。自虐でもなく、不幸自慢でもなく。
こういう光景は、今までも何度も目にしているけど、今日は妙に心に響いた。
裸、すっぴんで出会う場所だからこそ、取り繕う必要がないのかもしれない。でも、こんなかけ合いができる年齢だいうのが1番大きいと思う。
いくつになればこの境地に達するのか。
今は、中身が伴わないまま、30歳になることに怯えている。それなのに、50年も先の80歳になった時を想像して、今日見たお婆さんのようになっていたらいいなと、ちょっと希望も抱いている。変な感じ。
明日になれば忘れてしまうようなたわいもない会話。そういう話がしたい。