ぼんやり日記

毎日の記録

ホールケーキ

◎2020年7月21日(火)

 

 ずっと心待ちにしていた日。大学時代の友達2人が大阪に来てくれた。誕生日が近く、毎年合同でお祝いしている。オンライン飲み会もしないし、SNSもあまり更新しないタイプの人たちなので、会えるのが余計にうれしい。人混みに行くのも嫌なので、Airbnbで安い部屋を借りて、そこで過ごすことにした。

 

 先に合流したYは千葉から飛行機で大阪入り。駅で待ち合わせ、マンションに着くと到着時刻を連絡していなかったけどエントランスでホストが迎えてくれた。50代くらいの男性。Yが抱えたケーキの箱を見て「女子会ですか?」と言われたが、女子会って単語久々に聞いた気がする。部屋まで案内してもらい、オートロックの開け方やアメニティーについて説明を受けた。エアビー初めてだけど、こんな親切なんだなと感心。

 

 部屋に荷物を置いて、地下街のカフェに。Yは一昨年の夏、仕事を辞めてカナダに語学留学に行った。昨年末に帰国し、千葉の実家に戻った。ワーホリでまた海外に行こうと目標が定まったらしく、「とりあえず」と契約社員の仕事に就いたのだが、その矢先にコロナ禍。諸に打撃を受けている業種なので、2月から月に5~10日しかシフトが充てられていないそう。この時期も本来なら繁忙期だけど、今年は全くとのこと。

 留学やらコロナやらで話すのが本当に久しぶり。まずは「留学どうだった?」と話を振る。留学中、ルームシェアを解消したとLNEで聞いていたのでいろいろ苦労があったのだろうと思っていた。でも「総合的には、行ってよかったよ」と言う。「周りは自分のことをそんなに気にしていないって気づけた。日本ではこの感覚はなかった」。

 というのも、飄々として見えるYは実はお腹がとても弱い。ストレスが溜まると体調に出るのだ。前職も接客が伴う職場で、アルバイトをまとめる正社員という責任もあり、休み明けはいつも腹を下したり、胃が荒れたりしていたらしい。「働くのが向いていない」と仕事を辞め、病院に行くとポリープがいくつか見つかり、切除したそうだ。仕事のことを一切忘れようと留学(カナダを選んだのは高校時代南仏に留学経験があり、仏語が少し話せるから)し、どんな服装をしようが、どんな振舞いをしようが、その人がいいならいい、という雰囲気が好ましく思ったそうだ。Yは全然そんな風には見えないのだが、食事でどのメニューを選ぶのかですら人の目を気にしてしまう。アジア人だからとじろじろ見られるようなこともなく、日本の基準だけが全てじゃないんだな~と思ったらしい。それで、帰国後は次の渡航の資金を貯めるつもりだったのだ。いまは実家で時間を持て余し、お菓子を作ったり、パンを焼いたりしている。

 

 ひとしきり話を聞いて、 10年近く付き合いがあるのに、この人のことを知っているのはほんの一部だったんだなと思った。お腹が弱いのは昔から知っていたが、そこまでとは知らなかった。出会ったころからさばさばしていて、センスがよくて大人っぽく見えた(実際浪人しているから一歳上だけど)。でも言わなかっただけで、生きづらさ抱えていたんだなと。海外に行くことが、やりたくない労働をするモチベーションになったのに。このまま数年間海外渡航ができないと、ワーホリの年齢制限は超える。日本で正社員としてどこかに就職する気力もない。「やる気がない。積極的に死にたいとは思わないけど、ボタンを押して消えられるならそうしたい」。アイスコーヒーを飲みながら笑うYの言葉が悲しかった。

 

 近くのスーパーでサラダや酒を買った。テレビのお菓子総選挙でやってたよねーと、青のりとコンソメのポテチも買い、ぱんぱんに詰め込んだレジ袋を一つずつ持って歩いていると、大学時代みたいだなーと懐かしくなった。リビングのソファでポテチをパーティー開けしてだらだらしゃべっていたら、スマホに面倒くさそうな仕事のメールが来た。私が返信している間にYがポテチ2袋を完食していた。食べ過ぎだ。「夕食まだなのに!」と言ったが「大丈夫だよ~食べられる」とY。小食だからきっとお腹いっぱいと言い出すに違いない。

 もう一人の友達・Sが到着。ウーバーイーツを使ったことがないので試してみようということになり、アプリを入れて韓国料理店でニラチヂミ、トッポギ、キムチ餃子を注文した。本当にすぐ来るし、どこにいるか現在地を確かめられるのが面白い。Sはデパ地下で鯖寿司を買ってきてくれた。なんでもいいと言ったら鯖寿司を選ぶチョイスが独特だが。YとSはビールで、私はほろよいで乾杯。案の定Sがすぐにもう食べられないと言い出し、トッポギはほとんど私一人で食べた。

 食後にSが買ってきてくれたアンリシェルパンティエのイチゴのショートケーキを食べた。ホールケーキなんて中学生以来かもしれない。もちろん食べきれず、翌日に食べようと半分は冷蔵庫に残した。「祝アラサー」というチョコプレートが気恥ずかしいけど、うれしい。3人で写真を撮った。29歳になったSとY、28歳になった私。出会った時は19歳と18歳だった。見た目はそんなに変わっていないし、中身もそんなに変化がない気がする。ただ、皆ちょっと疲れている。

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 深夜にコンビニに行って「何買うんだっけ」「いや、何もいらないか」とすぐに帰ったり、YouTubeで「平成30年間のアニソン」というのを流して「おお、これ懐かしい」「全く知らない」と話したり。久々に会って、もっと話したいことがあった気がしたのに、取り留めもない話しかしていない。大学時代のように徹夜することもなく、ちゃんとシャワーを浴びて寝た。